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東京地方裁判所 平成12年(ワ)6554号 判決

原告 藤沢石油株式会社

右代表者代表取締役 新倉昭一郎

右訴訟代理人弁護士 小原卓

被告 東海エネルギー株式会社

右代表者代表取締役 澤啓二郎

右訴訟代理人弁護士 田原大三郎

同 菊池健二

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一申立て

一  原告の本案の請求

原告と被告の間で別紙契約目録記載の売買契約に基づく原告の被告に対する金四三五五万五〇四六円の売買代金債務が当初から存在しないことを確認する。

二  被告の答弁

(本案前の答弁)

主文同旨

(本案の答弁)

原告の請求を棄却する。

第二事案の概要

一  事案の要旨

本件は、別紙契約目録記載の売買契約が、原告と被告の間で締結されたものではなく、訴外重信建二郎と被告との間で締結されたものであるとして、原告が被告に対して本件契約に基づく売買代金債務は当初から存在しないことの確認を求める事案である。

これに対して、被告は本件契約に基づく売買代金債務は既に弁済済みであって被告は原告に対して売買代金債権の存在を主張していないから本件訴えは確認の利益を欠くものと主張する。

二  本案前の争点

本件について、原告に確認の利益が存在するかどうか

三  争点に関する原告の主張

(一)  事実関係に関する主張

(1)  原告は、石油製品の販売等を業とする会社であるところ、平成一一年一月ころ、原告の代表者が知人から石油取引により「一リットルあたり三〇銭くらい稼げる話がある」という話を持ちかけられたうえ、長田喜弘あるいは重信建二郎なる人物を順次紹介され、これらの人物に任せるように言われていた。

(2)  その後、長田らは原告代表者が全く知らない間に原告の東京支店を設置し、重信がその支配人という地位に立ったうえ、原告と被告間に本件契約が成立したかのような内容で平成一一年七月二二日付保税転売契約書(甲第一号証)及び譲渡証明書(甲第二号証)なる書面が作成され、また、同じく原告代表者の預かり知らないところで三和銀行虎ノ門支店に原告名義の預金口座が開設されて同口座から平成一一年九月一日付で一四五〇万円が払戻しされたほか同年八月一七日以降一連の金員の出し入れがなされた。

(3)  しかし、原告は東京支店を設置したこともなく、重信をその支配人としたこともない。また、前記保税転売契約書及び譲渡証明書は原告が作成したものではない。更に、前記預金口座からの金員の出し入れに関しても原告は全く関与していない。

(4)  他方、被告の当時及び現在の本店所在地はいずれも無人であって、そもそも被告は会社としての業を行っているとは認められない。

(5)  以上から、そもそも、本件契約は当初から実体をともなうものでもなかったし、少なくとも原告を当事者として成立したものではない。

また、仮に、重信が表見支配人に該当するとしても、被告はその事実を知りながら本件契約を行ったのであるから、本件契約は原告に対して無効というべきである。

(二)  確認の利益に関する主張

(1)  本件契約は石油ブローカーらが海外から輸入した軽油について、税関に輸入申告をしながら、地方税法七〇〇条、七〇〇条の三第一項または第二項による軽油引取税を免脱するため、原告との転売契約を仮装して、原告に同税に対する特別徴収義務を課する目的で仮装されたものである。

(2)  原告は、平成一二年一月以降、神奈川県から本件契約に関して原告が軽油引取税の特別徴収義務者となっている旨の通告を受けている。

(3)  しかし、前記(一)記載のとおり、本件契約は実体がなく、ないしは、原告はその当事者ではないのであるから、右特別徴収義務を負わないものであり、この点を明らかにするために、被告との間で原告が本件売買契約による代金債務を当初から負担していないことの確認を求める利益がある。

第三本案前の争点に関する裁判所の判断

一  前記第一記載の被告の主張によると、被告は現時点において原告に対する本件契約による売買代金債権の存在を主張していないのであるから、原告と被告間で現在の両者間の法律関係の確定について、確認の利益が存在しないことは明らかである。

二  したがって、原告の主張は要するに過去時点における原、被告間の売買契約の成立の事実自体を確認請求の対象とするものである。

確認訴訟における確認の利益は、原則として、請求が現在における権利又は法律関係の存否が対象となっており、即時に確定する利益が存する場合に肯定されるものである。もっとも、過去の事実関係ないし法律関係の確認であっても、過去の基本的な法律関係を確定することが、現存する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と考えられる場合には、確認の利益が存するものと解される。

この点について、原告は、本件契約による軽油取引を前提として、同取引が原告の東京支店にかかる取引であることから、原告が東京都から地方税法七〇〇条の一一第一項、東京都都税条例一〇三条の八による軽油引取税の特別徴収義務者として指定を受け、これにより、原告が本件契約による取引について地方税法七〇〇条の一〇、七〇〇条の一一第二項による軽油引取税の納入義務を負う可能性があることから、これを回避するうえでは、被告との間で本件契約の存否ないし原告がその当事者であるかどうかを確定する利益があるという。

しかしながら、原告が軽油引取税の納入義務を負うかどうかという問題は原告とこれについて特別徴収義務者としての指定を行い、かつ、同税について課税権限を有する東京都との間で生じる法律関係であって、原告と被告間の法律上の係争というべきものではない。

したがって、まず、本件で原告と被告間で本件売買契約の存否ないしその効力を確定したとしても、原告と被告間の法律上の紛争を解決するための方途となりえないことは明らかである。

他方、本件において、原告と被告間の本件契約に基づく売買契約関係の存否ないしこれに基づく代金債権関係の存否を確定したとしても、その効果は訴訟当事者である原告と被告間にしか及ぶものではないから、原告の前記特別徴収義務者たる地位、ひいては、本件契約による取引について生じる原告の軽油引取税の納入義務の存否を直接的に確定する法律上の効果を有するものでもない。

更に、原告が現在東京都より特別納入義務者として指定を受け、これについて地方税法七〇〇条一一の三第二項、東京都都税条例一〇三条の一〇第四項による登録がされ、その旨の通知がされていること、これにより、前記のとおり、原告に本件契約にかかる取引について軽油引取税の納入義務が課される可能性があるとしても、右登録の適否ないし課税処分の適否は地方税法一九条以下の規定に基づく不服申立の方法によるべきものであり、原告と被告との間の民事訴訟手続により解決するべき性質のものではない。

以上によると、本件においては、原告は被告との間で本件契約に基づく売買契約関係の存否ないしこれに基づく売買代金債務の不存在の確認を求める利益は存在しないものというべきであり、本件は訴えの利益を欠くものとして却下を免れない。

三  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 神坂尚)

契約目録

一、商品名 ガスオイル

二、数量 一七四万七九〇五MT(二一三万九六八一キロリットル)

三、価格 三六万八二〇五アメリカドル六五セント(金四三五五万五〇四六円 左記期日現在の為替相場一アメリカドル=一一八円二九銭で換算)

四、船積時期 平成一一年七月二二日

五、船積港 DAESAN

六、引渡場所 日本ガテックス株式会社神戸営業所

七、支払条件 オリジナル船積書類引渡後五営業日以内現金

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